様々な立場からSDGsを考える

 SDGsは国連の持続可能な開発目標。持続可能な社会を構築するための17の目標が掲げられています。毎日メディアカフェはこれまでSDGsに関連するさまざまなイベントを開催してきました。
 このCSRセミナーでは、第1部で、味の素株式会社グローバルコミュニケーション部 CSRグループ長の長谷川泰伸さん、NPO法人YouMe Nepal代表のライ・シャラドさん、武蔵野大学工学部環境システム学科3年で、「エコレポートウェイ21」所属の荒岡利彦さんの3人が、企業、NPO、学生のそれぞれの立場かSDGsについて語りました。
 長谷川さんは「味の素は130カ国で販売しています。そもそも、創業の志が『日本人の栄養状態を良くしたい』という社会貢献の考えでした。現在、Ajinomoto Group Shared Value(ASV)を掲げ、社会や地球環境とともに成長し続ける企業を目指しています。味の素は直接、農業や漁業に依存しており、農業における循環形態の形成などに取り組んでいます。国連で決めた目標なのでやらなければなりません。SDGsは世界の一人も取りこぼさないことを目指しています。企業がこれに取り組むことは操業許可ラインと言えます。味の素はSDGs達成のハブになりたいと願っています」と話しました。
 荒岡利彦さんは「エコレポートウェイ21」の活動を報告しました。「学生が企業のCSR報告書を評価する活動をしています。活動を通じて、企業を詳しく知ることができるし、企業にとっては報告書をより魅力的にすることにつながります。9年間で述べ65社のCSR報告書の評価分析をしました。4グループに分かれ、経営理念、職場環境、環境への取り組み、総合指標を分析し、企業と意見交換します。最近はガイドラインに忠実で、似たような報告書が多いという印象があり、その企業独自の報告書を読みたいと考えます。SDGsは社会課題が明確で分かりやすく、皆で取り組めると思います」
 ネパール出身で、日本の大学を卒業して通信系大手会社に勤めるライ・シャラドさんはNPO法人YouMe Nepalの活動を報告しました。「ネパールにYouMe学校をつくる活動をしています。今年4月、2校目ができました。僕が生まれた村は電気やガスのない村でした。小学校4年のときに国から選ばれ、高校まで国費で勉強させてもらいました。勉強させてくれた国に恩返しをしたいと思い、学校をつくる活動を始めました。ネパールは学校のクオリティが低く、政府はそのことに無関心です。故郷を変えていきたいと思っています。きちんと時間を守ることなど、日本のやり方を取り入れています。国に恩返しをするという志を持つ若者を育成することが目標です」
 討議では、荒岡さんは「多くの学生はSDGsのことをよく知らない」と現状を話しました。長谷川さんは「SDGsは先進国を含めて全ての人々が対象で、投資家や取引先などと話すときの共通の言語として便利に使えます。味の素は『公益財団法人味の素ファンデーション』を今年設立しました。飢餓対策に加え、栄養バランスを保つ活動に取り組んでいます。ベトナムでは、国民の栄養に対する知識が少なく、子どもが成人病になるなど、問題が生じています。国立大学に栄養学講座を設け、栄養士育成プログラムを推進しています」と話しました。シャラドさんは「ネパールの地方では、カレーとライス、トウモロコシなどを食べており、栄養は気にしていない。村にはサラダを食べる文化もない。健康について勉強してほしいと思います。味の素ファンデーションの協力で、給食プロジェクトに取り組みます。パンと豆のスープを給食に出します」と現状を述べました。
 また、荒岡さんは学生ができることとして、「SDGsに取り組んでいることをアピールしている企業が多い。就職活動で学生は企業の福利厚生を見ると思いますが、これからはSDGsの取り組みを見る学生も増えていくのではないかと思います。学生もSDGsについて知ってほしい」、シャレドさんは「SDGsが何か、故郷ではほとんどの人が知らない。故郷の現実と世界はつながっていないと思います。法政大学の学生が1年間休学して、ネパールで活動してくれています。違う世界に行って、行動してみてほしい。変えようと思えばできることを知ってもらいたいと思います」と訴えました。長谷川さんは「企業はSDGsと自分たちの事業をマッチングしたというのが現段階で、それゴールに結びつける、バックキャスティング(目標を想定し、そこから現在を振り返って、いま何をすべきかを考える方法)をする必要があります。SDGsの目標にマッチングするだけで満足している現状に危機感を感じています。社会に役に立ちたいと思っている学生が多いと思いますが、焦らないでほしいと言いたい。若いうちだけではなく、長い目でみて、ソーシャルインパクトが大きい道を選んでほしい。社会貢献を急がず、事業センスをつかんでから社会貢献をすることがむしろソーシャルインパクトが高いかもしれません。企業、NPOが協力してSDGsに取り組むことが必要です」と指摘しました。

第2部は、初公開の「日本の持続可能なまちづくりSDGsカードゲーム」に参加者全員で挑戦しました。このゲームは、毎日メディアカフェの運営を担当するイーソリューション株式会社(市瀬慎太郎代表)と、株式会社パズルステージ(中田圭代表)が共同開発しました。1組5人のチームに分かれ、大規模(人口100万人)、中規模(10万人)、小規模(1万人)の3パターンの自治体が、ゲーム終了までに人口50%以上減少させないことを目指します。

自治体は「観光型」「エネルギー型」「第1次産業型」に分かれます。資金、エネルギー、食料について、ほかのチームと相談・交渉したり、資源の交換、政策カードの取得をしたりして、人口を減らさない道を探ります。企業、NPO、学生で構成される各グループは皆で知恵を絞り、楽しくゲームに取り組みながら、SDGsについて学びました。

 

自治体版SDGsシミュレーションゲームは2月よりサービス開始いたします。