親子向けイベント「カルピス」こども乳酸菌研究所

アサヒ飲料株式会社(本社・東京都墨田区)の出前授業「カルピスこども乳酸菌研究所」が10月7日、毎日ホールで開かれました。
 出前授業には40人の親子が集まりました。講師はアサヒ飲料コーポレートコミュニケーション部ESG推進グループ課長の佐野公美さん。参加者は4グループに分かれ、各グループの先生役を、佐野さんと、コーポレートコミュニケーション部の大沼美由紀さん、松沼彩子さん、アサヒグループホールディングスCSR部門の松香容子さんが務めました。

 授業ではまず、カルピス誕生物語のDVDを上映しました。1902年、三島海雲という人が中国大陸に渡りました。25歳の時です。数年後、内モンゴルに行った時、体調を壊しました。その際、心配した遊牧民たちが瓶に入った飲料を飲ませてくれました。村の人たちが元気の源としている乳酸菌飲料でした。これを飲んだ海雲は体調が回復しました。帰国した海雲は再び、体調を崩しました。

そのとき、「体に良く、おいしい飲料を作ろう」と思い立ち、研究を重ね、乳酸菌で牛乳を発酵させた飲み物を完成させました。これが1919年の七夕の日に発売された「カルピス」です――という物語です。佐野さんは参加者に二つのミッションを提示しました。①乳酸菌や発酵の秘密にせまろう②未来へのアイデアを考えよう――です。

まず、三島海雲がどんな工夫をしたのかを知るために、においを調べてみました。赤い容器に入った牛乳、白い容器に入った一次発酵乳、青い容器に入ったカルピスのにおいを比べました。一次発酵乳はすっぱいにおいがします。カルピスにはすっぱさとともに、甘みやまろやかさがあります。
 この違いを説明するため、カルピスの製造過程のDVDが映されました。工場ではまず、生乳を遠心分離器にかけます。軽い乳脂肪分は中心部に、重い脱脂乳は周辺部に分かれます。

乳脂肪分はバターの原料、脱脂乳がカルピスの原料になります。カルピス菌(乳酸菌と酵母)を入れて発酵させた一次発酵乳はすっぱくなります。これは乳酸菌の力です。一次発酵乳に酵母の栄養になる砂糖を加えて二次発酵させると、酵母の力で、独特の香りと甘みのあるカルピスになります。

乳酸菌と酵母がカルピスを作っているのです。乳酸菌は1000分の2mmほどの小さな生き物です。カルピスの乳酸菌は90年以上にわたって受け継がれているそうです。次に、牛乳とカルピスのプレパラートを作成して、顕微鏡で見てみました。カルピスの中には、牛乳にはなかった細長い形のものが見えます。これが乳酸菌です。光っている塊もありました。「今日はラッキーですね、酵母が見えました。出合えない時もあるのですよ」と佐野さんは喜びました。
 続いて、すっぱさを測る実験です。牛乳とレモン汁、カルピスが机上に用意されました。子どもたちはpH(水素イオン指数)試験紙を、それぞれに入れます。すると、瞬時に試験紙の色が変わります。この色で酸性度が分かります。レモン汁とカルピスはほぼ同じ色になり、同程度のすっぱさであることが確かめられました。「発酵とは小さな生き物(微生物)が材料の栄養を使って新しい成分を作ることです」と佐野さんは説明しました。
 

 これまでに、400種類の乳酸菌が見つかっています。参加者はそのうち、ブルガリカスとクレモリスのヨーグルトを試食しました。ブルガリカスはすっぱく、とろりとしたクレモリスはまろやかな味です。一口に乳酸菌と言っても、種類によって味が変わるのです。
 第2のミッションは「未来へのアイデアを考えよう」です。佐野さんは「皆さんは大切な人のために、どんな乳酸菌があったらいいと思いますか」と問いかけ、子どもたちに乳酸菌を生かすアイデアを考えてもらいました。子どもたちからは「元気が出て病気にかかりにくい乳酸菌」「働いたり家事をしても疲れない乳酸菌」などのアイデアが発表されました。
 授業終了後、佐野さんとグループの先生は子どもたちに、「こども乳酸菌はかせ」のバッジを贈りました。最後に、カルピスで乾杯しました。子どもたちからは「乳酸菌と酵母の働きでカルピスができていることを知りました」、保護者からは「知らないことがたくさんあって、勉強になりました。楽しかったです」「自分の手で実験することが多かったので、子どもの心に残る授業になったと思います」などの感想が寄せられました。