オーガニック食材をより身近に感じ、生活に取り入れて頂くための新しい取り組み

「野菜の日」の8月31日、毎日メディアカフェのセミナー「オーガニック食材をより身近に感じ、生活に取り入れて頂くための新しい取り組み」が開かれました。
 有機野菜の宅配などを手がける「大地を守る会」(千葉市)が企画。講師は同会の生産農家で、農業組合法人「さんぶ野菜ネットワーク」(千葉県山武市)代表理事の富谷亜喜博さんです。
 大地を守る会・戦略商品開発チームの河野紗矢香さんが、自ら開発したという新商品「おやさいデリキット」を紹介しました。ポトフや回鍋肉(ホイコーロー)など野菜中心のメニューを、材料と調味料をパックにした「キット」スタイルで販売するものです。実際に参加者に作ってもらい、試食会も行いました。河野さんは「キットを通じて生産者の野菜を手に取っていただき、有機野菜への理解が広まればと思っています」と話しました。
 続いて、ニンジンなどを有機無農薬で生産する富谷さんが登場しました。無農薬で野菜を栽培する苦労について、「一般にニンジンは7㌢間隔で種をまくのですが、農薬を使うときちんと7㌢間隔で育ちます。無農薬の場合は、種を多めに落として後で間引きをします。1匹虫がいると大変な被害が出て、間隔が空いてしまいます。虫は外から飛んで来るものなので、ホウレンソウやレタスなど葉物には、1㍉とか0.8㍉といった細かい編み目のネットを周りにかけ、虫が入らないようにするなどの対策を行っています」と話しました。
 大地を守る会とのつきあいは28年になるそうです。「消費者は農薬というと野菜そのものにかけるかと思うかもしれませんが、私たち生産者は結構土に使います。農薬を使わないで農業をできないものかなと思っている時に、ちょうど大地を守る会と知り合いまして、『やるならば、私たちができた野菜を売りますよ』と誘われたのがきっかけです。気がついたら28年です」。
 有機農法は技術が向上し、収量が安定してきたそうです。「始めたころは、農薬を使わなければ虫食いも当然かなと思っていました。そしたら、消費者の方に怒られまして。『食べるところないですよ、葉物は』と。それはまずいなと思ったので、少しでもスーパーに売っているものに近づける努力をしなければいけない、と思うようになりました。農薬を使わないことを自慢するんじゃなくて。そういうところから日々少しずつ努力して、ずいぶん品質も向上してきたと思います。28年前は、包装も新聞紙にしていたのですが、今は包装もスーパーと同じようにしなければいけない。日々頑張っています」。
 おいしさの秘訣は…。「農薬を使わないと、同じ場所に同じ作物を作り続けることはできません。違う作物を順番に栽培する『輪作』をしなければなりません。いい土、土作りが重要です。いい土から生まれた野菜はやはり健康で、味がいいのです。私も最初何年間かは、できた野菜を配っても『安心だよね』と言われるぐらいでした。でも5年ぐらい経つと、『こんなおいしいレタスは食べたことがない』とまで言われるようになりました。お世辞かもしれませんが、だんだん土がよくなってきて、おいしくなってきたんだなと、思っています。そうして作った野菜を、多少値段が高くても食べていただけるというのが、本来の有機のあり方だし、消費者にアピールしたい点だと思っています。農薬を使わなくてもおいしくなかったらだめですよね」。
 栽培しているのは、5~7月の春にんじんが「ベータリッチ」、11月から3月ぐらいまでの秋冬にんじんが「はまべに」という品種だそうです。富谷さんは「我々は、品種を選ぶ際に、味のあるもの、例えばカロテンの含有量が多い、といった点を基準にして選んでいます。ですが、一般のものはスーパーのトレーにきちんと収まるか、といった基準で選ばれます。農業も機械作業だからです。野菜も、収穫や洗浄といった、作業がしやすいように品種改良されているのです。だから、味には差があると思っています。消費者がそういうものを選んでいるのも原因ではないかと思っています。不ぞろいでもいいのではないでしょうか」と話しました。

 写真説明 富谷亜喜博さん

   大地を守る会       http://www.daichi-m.co.jp/
   さんぶ野菜ネットワーク  http://www.sanbu.chiba.jp/