2016年

7月

28日

児童養護施設卒業者に振袖撮影をプレゼント~ACHAプロジェクト始動~

児童養護施設出身の人に成人式用の振り袖姿の撮影を贈る企画について語るイベント「児童養護施設卒業者に振り袖撮影をプレゼント~ACHA(アチャ)プロジェクト始動」が7月27日、毎日メディアカフェで開かれました。
 講師は、ACHAプロジェクト代表の山本昌子さんです。23歳の山本さんは生後4カ月で乳児院に預けられ、2歳から18歳まで児童養護施設で育ちました。自分と同様に児童養護施設で育った人たちに、成人式の写真をきれいな振り袖姿で撮ってあげたいと、今年3月、プロジェクトを立ち上げました。
 山本さんは、施設職員の人が寄付してくれた振り袖を着て登場しました。
「20歳になれば誰でも当然のように成人式に出席され、女性ならば振り袖を着て出席されることと思います。当然のように着ている振り袖ですが、世の中には成人式に振り袖を着ることができない子供たちもいます。児童養護施設出身の子供たちです。彼らは生活費や学費に追われ、成人式で振り袖を着ることは奇跡に近いことだと思っています。私も振り袖を着て成人式に出席することは諦めましたが、ある知人の方のおかげで、振り袖を着た写真を後で撮ることができました。そのことが生きる希望につながったと思います。この『ACHAプロジェクト』が、児童養護施設出身の子供たちに生きる希望を与えられたらと思っています」。山本さんは、プロジェクトの趣旨を語りました。「私は児童養護施設で育ったことを負い目に感じることはなく、不幸だと感じることもありません。本当に恵まれて、たくさんの方と出会い、たくさんの方から愛情を注いで育てていただいたと感じています」
成人式の晴れ着代は、振り袖の場合、レンタルで15~20万円、買った場合は30~150万円かかるそうです。さらにヘアメークや着付け代、撮影代を合わせると10万円ぐらいになります。虐待や病気など親の事情で親と離れて育ち、卒業後も親の支援を受けにくい、児童養護施設出身の人にとって、なかなか手の届かない金額です。
児童養護施設の職員になるのが夢だったという山本さんは、卒業後1年間自立援助ホームで生活しながら、働いて学資を貯めました。専門学校を卒業し、現在は保育士として働いています。「18歳から21歳のころが一番つらかった」と語る理由について、「施設で生活している時は、守られた空間にいたのだと、卒業後に分かりました。なぜ18歳になっただけで、自分の居場所までなくなってしまうのだろうという喪失感、孤独感がありました」。
友人とも会わずに懸命に働いて専門学校に進学しましたが、常にお金が足りない状態でした。学校でも余裕はありませんでした。「自分は一生懸命働いてお金を貯めましたが、周りの人たちは親からもらったお小遣いとかでほしいものを買ったり、好きなことをしたりしています。すごくうらやましかったです。その子たちが悪いわけではないとわかってはいたんですけど、どうしても嫉妬というかねたみを感じました」。
成人式に対しても、複雑な思いがありました。「私、興味ないから、行けないというよりは行かないと言っていました。意地でした」。その後、振り袖を着ての撮影を支援してくれたのは、専門学校で出会った先輩でした。先輩は費用を全額負担してくれました。
「その時に先輩から『自分は大切にされる存在だと思って生きてほしい』と言われました。すごくうれしかったです。それが生きる勇気につながったと、心から思います」。
そんな思いを形にしたという、今年4月の1回目の撮影の映像が流れました。撮影前にはミーティングの機会を持ち、撮影場所などの希望を聞きます。桜といっしょに撮影したかったという女性の撮影は、満開の目黒川周辺で行われました。
「プロジェクトで大切にしていることは、『世界中でたった一人のあなたのために』ということです。施設は集団生活なので、ひとまとめにされているという気持ちが大きかったので、だからあなただけに、あなた自身のために。あなたが生まれてきたことをお祝いしたいのだよという思いを込めて、一人一人丁寧に撮影していきたいと思っています」。
事前の打ち合わせに1時間。撮影当日はヘアメークに1時間、着付けに1時間、撮影に1時間半程度を予定しています。スタッフはボランティアで、着付けやヘアメーク、撮影など総勢25人。振り袖は20着から選ぶことができます。寄付で集まったもので、現在は帯締めや草履、長襦袢、ひもなどの小物類が足りないそうで、寄付を募っています。また、振り袖の保管場所を提供できる人も募っているそうです。
スタッフインタビューの後、プロジェクトの支援者からの手紙が読み上げられました。母子家庭に育ったという女性は、成人式で晴れ着を着たいなど言い出せなかったそうです。でも2人で出かけた時、呉服屋で「試着してみたら」と言われ、結局一式買ってくれた母親。パート代の何カ月分もする振り袖に「私は母にただ申し訳なくて、でもとてもうれしくて、今でもそのときの気持ちをはっきりと覚えています」。女性はプロジェクトへの思いをこう綴りました。「私のように振り袖を諦めている方たちに、振り袖を着るお手伝いができたら、あのとき、私が感じたうれしいきもち、照れくさい気持ち、ワクワクする気持ち、感謝の気持ちを感じてもらえるのではないかと思いました。その気持ちがその方たちの人生を強く、明るくしてくれたら、それはただ、振り袖を着て記念写真を撮るということ以上の、言葉にはできない大きな意味を持つと私自身の経験から確信しています」。
児童養護施設は全国に約600カ所、約2万8000人が生活しています。プロジェクトは、今後東京以外での出張撮影にも対応したいとしています。さらに、サブプロジェクトとして、入学式や浴衣の撮影も企画しているそうです。備品の寄付に加えて、プロジェクトへの支援金も募っています。

写真説明  山本昌子さん(左)

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