「企業の被災地支援を考える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CSR(企業の社会的責任)セミナー「毎日Do!コラボ 企業の被災地支援を考える」でした。
 講師は味の素CSR部の大和田梨奈さんと、宮城県水産業振興課の稲田真一さんです。
 味の素は東日本大震災後の2011年10月、「東北応援 ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」を立ち上げました。仙台市、岩手県遠野市、福島県いわき市に拠点を置き、被災3県の47市町村で1930回にわたって料理教室などを開催してきました。参加人数は延べ3万人を超えます。大和田さんは、13年夏に制作した5分間の映像を使い、現地での活動を紹介しました。
 4年間にわたる活動で学んだことは、以下の9点だそうです。
① 現地ニーズの把握
② プロジェクトの設計
③ 継続・終了戦略を立てる
④ プロジェクトチーム編成
⑤ 地域との連携体制
⑥ プロジェクトの社内周知
⑦ プロジェクトの成果を出す
⑧ 成果を可視化し報告する
⑨ 本業とのシナジーを出す
現地ニーズの把握では、社会福祉協議会など震災前から現地で活動してきた団体の声を聞く重要性を語りました。④は、味の素では自社従業員を現地の専任スタッフにしているそうです。⑧では、先月活動内容をまとめた単行本「復興ごはん」(小学館刊、1100円)を発売し、地道な活動の成果として報告しました。
 食にかかわる会社だからこそ、被災地支援が「赤いエプロンプロジェクト」という形になった同社。さらに踏み込んで本業に支援を組み込めないか、という視点から活動が発展したのが、宮城県との「コラボレーション(協働)」でした。
 きっかけは、14年3月に行った、村井嘉浩宮城県知事へのインタビューでした。
 産業復興支援という形を取りながら、味の素の本業にも生かせる支援がないか。お互いに「win(ウィン)―win」となる関係が大事だと、考えるようになったそうです。
 同社の和風だしの素「ほんだし」1箱あたり1円を、被災地支援に充てるキャンペーンを15年3月から5月まで実施。宮城県産地魚市場協会のPR映像の制作などを行いました。9つある市場は捕れる魚も違います。「寄付金を活用し、市場をクローズアップして、おいしいものがあることをPRしようと思いました」と稲田さん。1分半の映像は、朝早い市場で働く海の男たちを映したもので、宮城県産の水産物の販売促進につながればと考えているそうです。
宮城県産の銀だらと、同社の合わせ調味料「Cook Do」を、レシピとともに紹介する「コラボレーション」。同社川崎事業所の食堂委託業者とのコラボレーションでは、宮城県産銀だらを使ったメニューを販売し、好評を博したそうです。
 稲田さんは「企業と行政がいっしょになってできることは必ずあります。宮城県にとっていいことが味の素のためになり、味の素にとっていいことが宮城県のためになる、コラボレーションにつながるということを、今後も引き続きやっていきたいです」と話しました。
 最後に、単行本「復興ごはん」について、大和田さんからさらに説明がありました。復興期の食事で、被災地の方に印象に残るエピソードについて尋ねたところ、みんなで天ぷらを揚げたこと、と答えた方がいたそうです。仮設住宅の狭いキッチンでは、なかなか天ぷらを揚げることができず、みなさんストレスを感じていたそうです。何をしたいか問うと、「食べるというより天ぷらを揚げたい」との返答。みんなでたくさん天ぷらを揚げると、みなさん「あーすっきりした」とおっしゃったそうです。
 「復興期の食事において、大切なことは何だったか、というと、一緒に作って一緒に食べることが大事だということにたどり着きました。そのことをお伝えしようということで本を作りました。経験をどう世の中に残していくか、ということに意味があると思います」。
 毎月第3水曜日は「みやぎ水産の日」だそうです。